日本の技術の精度とは何か マツダ自転車工場

 

 

数値の精度を超えた手仕事

 

日本の職人が追い求め続けてきたものは精度である。

 

精度は数値に表して、その優劣を競いがちだ。

 

どんなに数値のうえで、コンマ何ミリの精度だと誇っていても「使いにくいな」と感じさせてしまったら、その道具は人から選ばれなくなってしまう。

 


店舗のドアの取っ手まで自転車の部品

 

選ばれてこそ道具、使われてこそ道具なのだとしたら、日本の職人が追い求めてきた精度とは何だろう。

 

私が考えるに、道具における精度とは、違和感の排除である。
使う人が感じる違和感を、徹底的に排除して、満足なものを作る。

 

しっくりとくるものを作り出す。

 

精密な道具に敬意を払い、人がその道具に合わせて使う。
使いこなせるようになるまで修練を続けて使う。

 

それも道具のあるべき姿だろう。

 

いっぽうで、使う人に合わせて道具を作り出す。
違和感を徹底的に排除する。数値の精度を超えた手仕事をする。

 

それもまた道具のあるべき本質なのではないか。

 


下町の自転車屋に松田志行がいる

 

東京都荒川区の新三河島駅の近くに、小さな自転車屋がある。

 

マツダ自転車工場。1951年に創業。二代目の現社長、松田志行が1975年からオーダーメイド自転車を手がける。

 

松田志行は、日本でトップクラスの競輪選手が乗る自転車のフレームを作る職人だ。

 

プロの競輪選手が乗るほどの自転車を作れる職人だから優れているのだと誉めたたえるだけではマツダ自転車工場の片鱗しか見ていないことになる。

 

マツダ自転車工場が優れているのは、作るすべての自転車に明確な目的があることなのだ。

 


端正された工場の内部

 

「競輪選手は一等賞を取って賞金を稼ぐのが目的。だから勝つための自転車を作る」

 

松田志行が言うことは、その通りだと思う。しかし次のひと言には一顧があった。

 

「日本人は自転車に仕方なく乗っているんですよ。2万円か3万円で買える自転車にはね」

 

通勤通学、営業回り、町から町への移動、スーパーへの買い物、保育園への送り迎え。

 

「こぐのには重たいし、でも歩いていたら間に合わないし、操作も大変だけれど、まぁまぁ便利っぽいから仕方なく乗っている。そうしたものが自転車だって思い込んでいる」

 


LEVELはブランド名

 

課題を解消するかに思われたのが電動アシストの登場だった。

 

「10万円くらいで買える。たしかに坂道なんかは楽です。でもバッテリーを積まなきゃならないし、充電は必要だし、加速のときにはカクンて、いかにもパワーを補填しましたみたいな反動は残るでしょう。重力的に楽にはなるけれど、楽しくはない」

 

たしかに自転車はこぐのに力が要る。
坂道を上るときはこぐのが重くなる。

 

だから電動で補助しないと楽にはならないと、自転車メーカーが認めてしまっているようなものである。

 


オーダーメイドの自転車が並ぶショールーム

 

「乗る人の身体に合わせた自転車を作れば楽にこげます。つまり肉体と道具の契合です」

 


 

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