和菓子屋が守る3つのきずな・スバル最中

 

今日も伊勢屋を全国からのスバリストたちが訪れる

 

経営者である前に職人であれ

 

佐々木光男と真由美夫妻は熱狂的なまでのSUBARUのファンで、伊勢屋を訪ねたのだ。

 

「太田市の工場も見たかったし、スバル最中も食べたかったし、ぜったいにここでしか買えないお菓子ですからね」

 

夫婦の笑顔がはじける。岡田喜浩の笑顔もはじける。

 

ここでしか買えない。出し惜しみではない。伊勢屋にはゆずれない一線がある。

 

包装も機械を使わず手作業

 

スバル最中には、あちらこちらから引き合いはある。

 

群馬県の名物として、あるいは太田市の名物として、観光施設や、駅の売店などからスバル最中を売りたいと声がかかる。

 

「最中は、作りたては皮がパリパリしています。でも、しっとりするのは一晩、寝かせたその日なんです。食べ頃は作ってから2日目なんです」

 

皮とあんとが口に入る瞬間の、微妙な水分と甘みのせめぎ合いが、味わいのハーモニーを奏でる。その瞬間の味わいを提供してこそ、スバル最中なのだという。

 


太田伊勢屋3代目岡田喜浩

 

「店頭なら、品質を保てます。しかし別の場所で売っていただくとなると、私たちが提供する味の品質管理ができません」

 

岡田喜浩の、いや3代にわたり伊勢屋が守り抜いてきた、和菓子職人としてのゆずれない一線なのだ。

 

「美味しいからこそスバル最中なのであって、名物だからスバル最中なのではありません」

 

私はぶしつけな質問を岡田喜浩に投げかけた。

 

「それでも太田市、いや群馬県、あるいは全国展開できる可能性があるのではないですか」

 

岡田喜浩は即答した。

 

「伊勢屋親交会」と「SUBARU」とが背中合わせの壁面

 

「経営者に軸足を置くか、職人に軸足を置くか。経営者として拡大発展する気になって、味が落ちても構わないと考えたら、SUBARUさんに申し訳が立たない。美味しく味わっていただく。スバル最中は美味しくなければいけません」

 

つまり伊勢屋は代々、和菓子職人であることに軸足を置いているのである。

 

スバル最中のあんを練り上げるのに2日間かかるという。

 

だから私たちは2日続けて伊勢屋を訪れた。

 

スバル最中の命である、あん作りを見せてもらうためだった。

 


北海道十勝産の小豆を傷つけないように釜に注ぐ

 

朝8時。青木博が小豆を釜に入れる。北海道十勝産の小豆である。

 

銅の釜を使うのは、熱が均一に小豆に伝わるからだ。

 

ひと煮立ちの瞬間に、水を入れる。小豆の表面に寄ったシワを伸ばす。

 

釜からあげてアクを取る。

 

さらに水を注いで沸騰させたら、1時間蒸しあげる。

 

蒸し上がったところで大量の水を注ぐ。しかしいっきに冷ますと小豆が割れる。

 

釜の網目の中を小豆が均等に踊る

 

青木博は、一瞬たりとも釜のそばを離れない。

 

砂糖を入れ、また入れ、ゆっくりと入れ、釜の中の状態を見続けながら、砂糖を入れる。ここまでが初日の仕事である。

 

「あとは一晩、寝かせます。小豆が蜜を吸うのを待ちます」

 

青木博の言葉はおだやかで、小豆があんに成長するのを愛おしむようだ。

 


 

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