伝統と変革を綾なす江戸組紐 龍工房

 

組紐を組む前の緻密な手作業

 

林茂樹が糸繰りをする。両手に束になった糸を広げる。糸束を開く工程だ。
 
養蚕家から届いた絹糸をすべての工程に移すための準備であり、検品も兼ねている。
 
「日本全国に無数にあった養蚕農家は、いまや368軒になってしまいました。世界で作られる絹糸の0.38パーセントの生産量になってしまいました」
 
と福田隆は言う。龍工房ではこだわったもの作りとして国産の絹糸を扱う。
 
群馬県の養蚕農家と提携して絹糸を仕入れている。
 

糸繰りをする林茂樹
 
林茂樹が、五光台に1束分の糸をセットする。
 
単糸から精錬をした後に、糸束がばらけないように結ばれた横糸のくくりにはさみを入れる。
 
五光台から始まりの糸を引く。
 
五光台を回しながら、糸車に糸を移動させる。
 
この工程を「糸車に返す」と呼ぶそうだ。
 
続いて経尺をする。糸の長さを測る。
 
145~155センチを並尺と呼び、これがMサイズの組紐になる。
 
165~175センチを長尺と呼び、これはLサイズの組紐になる。
 
経尺での周回が組紐に組まれると完成品の組紐は60パーセントの長さに組み上がる。
 
経尺のときに糸を撚る。12本、18本、58本と撚るのだが、林茂樹の手は糸を数えている様子がない。経験と体感とで、経尺の作業をあっという間に仕上げてしまった。
 

五光台から糸車に絹糸を返す(移動させる))
 
かせ染めとは、絹糸を染色する工程だ。
 
草木の染料で40~80度、そして90度と温度を上げていきながら、染める。40分の染めを3回繰り返す。福田隆は染料の希少性にも言及する。」
 
「明治神宮の草木、鎌倉東慶寺のあじさい、すすきなどが龍工房には届けられます」
 
染め上げられた絹糸には、日本の自然の色彩が投影されていて、深みがある。
 
絹糸は、玉付けされる。絹糸を木製の糸玉に巻き上げる。
 


経尺の様子
 
福田隆が組んでいるのは丸台である。
 
台の天板(鏡)から糸玉を各方向に位置を置き換え、組み上げる。
 
へらは使わない。丸組み、角組み、平組みと呼ばれる様々な組紐のすべてを組むことができる。
 
今西淳也が向かうのは角台である
 
糸の置き換えと締めだけで組むのは丸台と同様だが、上方向に組み上がる。球数は少なくて、目あいの善し悪しが現れやすい。シンプルゆえに職人の技量が問われる台なのである。
 
角台は江戸後期に考案されたという。丸台よりも先にできたのがこの角台だ。
 

かせ染め
 

林茂樹は綾竹台を操る。手前にまとめた糸を上下に掛け替えて組む。
横糸を通しては、高台と同様に、太刀と呼ばれるへらで打ち込んで締める。
 
へら打ちをするため、他の台で組んだ組紐よりも、目あいがきれいに整い美しさが増す。
「よくその手順を間違えないものだ」
 
と私は、それぞれの台に組紐を組む職人技に感嘆したが、高台や綾竹台に打ち込まれる、太刀のトントンという音を心地よく見つめているうちに、眠気さえ感じたものである。
 

 

それほどに組紐を組む職人の仕事はゆったりとしたリズムを繰り返し、正確で複雑さを単調に響かせる。赤ん坊の鼓動にも似た自然な手の動きが繰り広げられているのであった。
 


 

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