日本のものづくりを貫くシグマのカメラとレンズ


 

国内一貫生産による高品質・高付加価値のものづくり

 

シグマは、マーケティングによる商品企画の路線をとらない。

 

「最上のレンズとは、作りたいカメラとはこれだ」という開発主導型の経営を貫いている。

 

神奈川県川崎市にある本社の「開発・設計」部門の意思を、福島県磐梯町にある「工場」が製品に仕上げるシステムをとっている。会津工場で働く人は1400人を超える。

 


試作レンズを鏡筒にはめ込むための治工具を削り出す

 

会津工場で、二瓶弘はウレタンゴムを削っていた。
削られていく突起の部分を指で触っていた。

 

と、突然にツッと工作機械の刃をウレタンゴムから外した。

 

「1ミリ程度の厚みの違いなら、指先で分かるんです」
だから工作機械の刃を外したのだという。指で触ったあとにスケールで、口径を確かめる。
指示書と同じ径でウレタンゴムの部品は完成していた。

 


スケールで測るが1ミリ程度の厚みの違いなら、指先で分かるという

 

「何の部品を作っているのですか」

 

私の質問に二瓶弘は、試作品を作るための工具を削り出していたのだと答えた。

 

このウレタンゴムの治工具は、レンズを鏡筒にはめ込むためのものだという。
指示書は会津工場の技術部門から出されたものだ。

 

一瞬、何のことか分からなかった。

 

「シグマはより高次元の製品を作り出すための試作を繰り返しているんです。その際に、組み立てるための治工具が必要です。会津工場では、その治工具から製作しているんです」

 

私たちを案内するシグマ会津工場の経営企画本部総務部長の渡部幸四郎が、そう説明してくれた。
試作に必要な部品も会津工場で内製しているという。

 


手作業の工程が多いシグマ会津工場

 

長澤亜希子は、鏡筒の目盛表示の色入れ作業をしていた。

 

機械による自動プリントではない。シグマのレンズやカメラの表示文字は、手作業で印刷・色入れされている。

 

「では、ひとつひとつの製品の目盛表示は、世界に唯一、その製品を手にした人の個性というか、一点ものだというわけですか」

 

との質問に、長澤亜希子は首を横に振った。

 


メモリ表示の色を入れるのも、手作業

 

「仕上がりにばらつきがあっては、シグマの製品にはなりません。すべてが同じ品質になるように、厚すぎず、薄すぎず、にじみ無く、正確に色を入れていくんです」

 

「刻印仕様のメモリの着色は、自動化・機械化が難しく手作業での色入れです。精度の高い手作業により、修正はほとんどありません。また、印字の変更があったときなどは、手作業の職人技ならではの即時対応ができます。原版が必要な印刷機械では太刀打ちできません。」
と、渡部幸四郎は、またシグマイズムについて語った。

 

次に私たちが見たものはおよそ工場のイメージとはかけ離れた、静寂と沈黙の工程だった。

 


レンズの検品も目視で行う

 

女子工員たちは、スッと目の高さにレンズを持っていき、ほんの数秒でそのレンズを次の工程のためのドームに乗せていく。一切の音はない。レンズを置く音すらしない。

 

コーティング前のレンズの検品作業である。キズや汚れがないかはもちろん、微細な埃が乗っていないか、帯電していないか、自分たちの目で見て検品する。

 

「レンズをドームに移すまでの一瞬の残像で異常は発見できると彼女たちは言うんです」

 

ここでも、機械より人間の目を頼りにしているのである。

 

レンズを持ち上げる高さがひとり一人決まっている。背筋を伸ばし、精神を集中させて、彼女たちは静寂のなかで、検品作業を続ける。レンズの側に身体を傾けることはない。

 


レンズの検品は静寂のなかで淡々と進む

 

「その方が精度が上がるんです。その繊細さは私にはできない職人技ですね」

 

と渡部幸四郎がため息をつくように私たちに言った。

 

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