悟られない義手、義指・平岡製作所


 

まだまだ進化する義手の未来

 

平岡敬悟が作るのは、装飾義手である。
装飾義手は、動かない。

 

5本の指を自在に動かすことはできない。
それはじつは筋電義手でも同様である。

 

指が動く筋電義手であっても握る、つまむ、開くという単純な動作を2指+親指、あるいは4指+親指で動作している。

 


完成した義手を持つ

 

スターウォーズに登場したような、5本の指を自分の意思に従って自由自在に動かせる義手は、いまだ開発途上である。

 

握力の調節も、触感のフィードバック、つまり触っている感覚を脳が感じることができる義手もまだ開発途上である。
ピアノの鍵盤を自分の意思で思い通りに奏でられる義手はまだない。

 

こうした理想の義手に近いものはすでに出来つつあるが、数百万円から数千万円する。

 

アメリカ合衆国は可動式義手の先進国であり、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国も広いシェアを持っている。

 

「日本のホンダやソニーが本気で作ったら、もっと精巧で、もっと軽くて、もっと安い可動式義手が誕生するかもしれないんですけれどね」

 


筆者の指先に型取りの薬剤を塗る

 

足りないのはニーズだ。そうした理想の義手を求める人はいても、世界の人口比からすると、少数人数に限られる。
欧米においては、機械そのものの可動式義手や義足を、隠す文化がない。

 

義手や義指や義足を着けていることを、むしろ堂々と他人に見せる。個性であると自分も他人も認識するからだ。
可動式義手、つまり機械むき出しの義手の開発分野では、日本は先進国とはいえない。

 

しかし装飾義手の分野では平岡敬悟のような義肢装具士が日本にはいる。

 


筆者の人差し指の石膏モデル

 

微細で繊細な手仕事は日本人ならではなのだろう。

 

欧米からも、アジアからも平岡敬悟の職人技を頼って来日する人は少なくない。

 

もちろん平岡敬悟のもとを訪れるのは、多くは日本人だ。
はじらいの文化が日本にはある。

 

奥ゆかしく、魅力的で、他人を思いやるのが、本来のはじらいの意味なのだ。

 

はじらいとは“あなたのことを気にかけています。だからあなたが心地よいように”という心遣いのことである。

 


指紋まで再現された義指、義手

 

「僕のもとに義手や義指を作って欲しいと訪ねてくる人は、自分のためではなく、ほとんどが他人のためなんです」

 

ある人は、

 

「娘の結婚式でバージンロードを歩くときに、両手が揃っているように来賓客に見て欲しいし、娘にもそういう父親だと思って欲しい」

 

またある人は、

 

「友人の葬式に参列するときに、きちんと合掌したい。美しい手で、両手を合わせてあげたい」

 

「接客業なので、品物をお客様に見せるときに、指のない手で相手に気を遣わせたくない」

 

こうした依頼者の言葉は日本のはじらいの文化を象徴している。

 


右足親指の義指を石膏モデルにはめてみる

 

はじらいは汚名のはじではなく、思いやりなのである。
奥ゆかしいはじらいのために、平岡敬悟の義手や義指は、依頼者の身体の一部になるのである。

 


 

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