デザイナーと職人が織りなす喫煙具

 

 

職人の技を「考える人」の存在

 

私は葉巻をたしなむ。懇意にしてくれるシガーバーも数軒ある。

 

その葉巻用灰皿と、葉巻の吸い口をカットするシガーカッターに出会ったのは、馴染みのシガーバーの席に座ったときだった。シガーバーのマスターが言った。

 

「浦山さん、このシガーカッターを試してみてくださいよ」

 

葉巻の吸い口をカットするときには、大抵はパツンと吸い口の真ん中あたりを切るときに手応えが返ってくる。差し出されたシガーカッターを使って驚いた。

 


上手くカットできた葉巻は吸い口からも紫煙が立ち昇る

 

パツンという反動がない。いつ切り落としたのか。まったくストレスがなく吸い口はカットされた。それでいて、カッターのつまりはハサミの持ち手がピタリと合わせられるときに言い伝えられぬ快感が私の手に伝わった。

 


(上)吸い口をカットするときのストレスがまったくない「刀」
(下)「刀」でカットしたばかりのホヨ・ド・モントレーの葉巻。断面がきれいだ

 

灰皿も見たことがないものだった。鉄製らしい。楕円形の深い皿だった。

 

葉巻の灰は、紙巻きタバコのようにせわしなく灰をトントンと落としてはならない。
すでに燃えた先端の灰がフィルターの代わりをしてくれるからだ。

 

よくある葉巻用灰皿は、大きくて平面的だ。先端の灰を常に空中に浮かせるように灰皿に置いておく必要があるからだ。だから大皿にしなくてはならないのである。

 


南部鉄器で作られた葉巻灰皿

 

それにしてもこの灰皿である。

 

この灰皿はコンパクトで、楕円の真ん中が深い。灰はあちらこちらに散らばらず、楕円の真ん中に集まる。

 

屋外でもこの灰皿なら、無粋な風に灰が巻き上げられて衣服が汚れるという思いをしなくて済むだろう。鉄製のようだから、落としても割れない。

 


関の理容バサミ職人が作った葉巻カッターは、その名も「刀」

 

マスターがアイスコーヒーとチーズケーキを運んできた。

 

「ハサミは岐阜県関市の理容バサミの職人の手作りで、灰皿は岩手県の南部鉄器の職人によるやはり手作りです」

 

「その職人たちに会ってみたい。ぜひ紹介してください」

 

「いや、じつは灰皿もシガーカッターも職人たちが考えたものではないんですよ」

 

「どういうことです?」

 

「その形と機能性を考えた人がいるんです。デザイナーさんですね。そのデザイナーの要望を叶えたのが、関の理容バサミの職人と、南部鉄器の職人なんです」

 

私は、デザイナー井上頌夫と会うことにした。

 


 

問い合わせ窓口:一般財団法人雇用開発センター
問い合わせフォームか、03-5419-3090まで