色鮮やかに生活を彩る 勝田ナセン


 

日本人の生活と共にあった手ぬぐい

 

 手ぬぐいの機能性を考察しよう。

 

 木綿の通気性から、濡れても乾きやすく、手を拭く、汗を拭う、入浴の際に身体を洗うなど、皮膚と接触させる用途が多い。擦り傷切り傷などを負ったときには、緊急の包帯として使われた。

 

 身体の熱を冷やす目的で濡らした手ぬぐいを額に当てて使われた。

 


天井で干された染め布は引き下ろされて巻き取られる

 

 頭巾として頭を覆ったり、額に巻き付けて鉢巻きにしたり、キリキリと細く巻き上げて、やはり鉢巻きにしたりもする。 日本の祭礼に参加する者たちの頭部には、鉢巻きが見られる。

 

 身体との接触を離れても、手ぬぐいは活躍する。

 

 日本の伝統的な包装布といえば、風呂敷が第一に挙がるが、ちょっとした小物なら手ぬぐいが活躍する。木の実や金平糖などの菓子を包む。出汁を取る際には、鰹節の削り節を手ぬぐいに包んで、鍋の水を湧かす。ときには漉し布として調理にも使われる。

 


巻き取り作業中

 

 私は山梨県にキャンプに出かけた際に、コーヒーを手ぬぐいで淹れたことがある。
 コーヒードリッパーが無かったのだ。

 

 小鍋に湯を沸かし、沸騰から少し冷ました湯の中に、粗挽きしたコーヒー豆を手ぬぐいに包み、ティーバッグならぬ、即席のコーヒーバッグの要領で、鍋の中の湯にコーヒーを抽出した。

 

 コツは沸騰させないこと。香りが蒸散してしまうからだ。美味かった。

 


染め台の上部からは湯が出る仕組みで、直前の染料や糊を洗い流す

 

 日本の冬は寒くて乾燥する。

 

 濡らした手ぬぐいを、室内に2~3枚干しておけば、加湿器になる。

 

 江戸時代の日本人は、このように一枚の手ぬぐいを日常生活に応用した。

 

 使い古した手ぬぐいは、硬さが取れて柔らかくなる。

 

 和服を着る際に襟が汚れないように、当て布に使う。
 さらに使い古されれば、赤ん坊のおむつに当てる。
 あるいは、布巾として食卓台を拭く。
 家の掃除に、ぞうきんとして使う。
 切り裂いて、木の柄に結びつけて、はたきとして使う。

 


工場の壁には布の引き上げに使われるガリ棒が並ぶ

 

 このように一枚の木綿布に過ぎない手ぬぐいは、工夫次第で日常生活を豊かにする。

 

 こうして使い古すにしても白地の木綿布ではなく、絵柄が施された手ぬぐいである。
 日本人は質素な豊かさのなかに、機質を見いだしていた。

 

 反意語の無機質を思い浮かべると分かりやすい。

 


シルクスクリーンの判型

 

 日本では白装束は無機質を意味した。死者の衣装であり、切腹する者の衣装であり、あるいは花嫁の衣装である。非日常は無機質なのである。

 

 日常は機質がなければ成立しない。

 

 たかが、手ぬぐいに絵柄を施すのは、日常の豊かさをもたらしてくれるからなのだ。

 


 

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