作家ではなく職人であれ
柘製作所のパイプ

 

 

パイプを吸う理由

 

パイプを吸っている人物というと、誰が思い浮かぶだろうか。

 

シャーロック・ホームズ、ムーミンパパ、(架空の人物)アインシュタイン、ダグラス・マッカーサー、藤子F不二雄(実在の人物)……。

 

そしてかくいう私(実在の人物)もパイプを吸う。

 

もちろん喫煙行為のために、パイプ喫煙もあるわけだが、紙巻きタバコ(シガレット)とは、ずいぶん異なるのがパイプ喫煙だ。

 

金彩あざやか・これもまた柘製作所のパイプ

 

紙巻きタバコは、性急である。最近は日本でも禁煙が当たり前になってきて、路上はもちろん、ホテルでも、喫茶店でも、レストランでもタバコを吸える場所は限られてきた。

 

ときには遮蔽された喫煙室に押し込められて、タバコを吸うはめになるのだが、たいていの人は紙巻きタバコだけを吸う。

 

喫煙室で葉巻やパイプを吸うなどどいうケースは、まず見られない。
それだけ喫煙=紙巻きタバコであり、ニコチン依存症を一時的に解消するためのいたしかたない行為こそが喫煙と認識されている。

 

性急に、つまりは焦りながらイライラとした気分を一時的に解消するための行為が喫煙だと他人からは見られることになる。

 

なんと喫煙文化が後退してしまったことかと私には思える。

 

パイプ喫煙は着火で味が決まる

 

パイプを吸うとなると、一服で30分以上、ときに1時間はかかる。葉巻も同様である。
パイプスモーキング大会というイベントでは一服のパイプを2時間以上吸う。

 

そしてパイプは手間がかかる。映画やドラマの中で描かれることはないが、パイプを吸うためには、タンパーという専用の道具が必要になる。
パイプ葉の火種を移動させたり、灰を押したりして、下部に火を移したりする。
吸った後や吸う前の手入れも入念にしなければ、おいしいパイプ喫煙はできない。
代表的なのはモールという毛棒で、煙道の汚れを掃除することだろうか。

 

どうしてそんなにも手間をかけてパイプを吸うのか。

 

簡単にいえばおいしいからである。もっと的確にいうならば、もたらされる深さが紙巻きタバコより数倍も深いからである。

 

9ミリフィルター使用のファクトリーメイドのパイプ

 

私がパイプを手にした30代の頃は「こんなにも吸いにくいものか」と半ばイライラした。
パイプに慣れた40代の頃は「こんなにもストレスを感じないでタバコを楽しめるものか」と清閑に思った。
シャーロック・ホームズは、映画やドラマの中ではパイプをくわえたまま捜査に出かけているが、原作小説にはそんなシーンはない。そもそも鳥打ち帽子もかぶっていないし、チェック柄のインバネスコートも着ていない。ホームズがパイプ喫煙をするのは、室内で、推理のために頭脳を働かせるときだ。

 

左 ツゲ・メタル・ブロウフィッシュ
右 煙道がふくよかで喫味はまろやかになる

 

ムーミンパパは、夢想家で冒険家で、そして作家だ。シルクハットをかぶり、ロッキングチェアーに身を任せながらパイプを吸う。ムーミンパパがパイプ喫煙をするのは、夢想と冒険の果てに生まれる物語を思索しているときかもしれない。

 

アインシュタインは言っている。
「パイプをふかすことは、人事百般の問題において、特に冷静で客観的な判断を下すのに役立つ」

 

ダグラス・マッカーサーが厚木基地に降り立ったときにコーンパイプを吹かしながら日本に足を踏み入れた。コーンパイプとは、安価で3000円もあればおつりが来る。思索のためか、展望のためか、宿志のためか。いずれにしても性急な気持ちからタバコを吸っていたわけではあるまい。

 

藤子F不二雄はベレー帽をかぶりパイプをくわえた自画像を常に描いた。パイプは藤子F不二雄にとって分身だったようだ。漫画を描くときにもパイプ喫煙をしていたのかは、私は知らない。しかしパイプ喫煙の思索によって「ドラえもん」「「パーマン」「キテレツ大百科」などが創作されたのだろう。

 

着火の具合を確かめつつ、ゆったりと一服する、代表取締役社長・柘恭三郎

 

そう、パイプは思考する喫煙なのである。パイプは物静かで、穏やかな喫煙なのである。
精神が限りなく広がる一方で、集中力が高まる。深遠な精神に落ち込みながら思考は上昇する。時間はゆったりと流れる。

 

秒針付きの時計が紙巻きタバコ喫煙だとしたら、秒針はなく、1分おきの目盛すらない時計がパイプ喫煙だ。

 


 

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