エボナイト万年筆 – 笑暮屋


 
笑暮屋では、イレギュラーだが、自社製品以外の万年筆の修理も引き受けている。
2015年5月6日のブログを見てみよう。
 
パーカー75は1964年に製造が始まった。
傑作万年筆だが、1994年に製造が打ち切られている。
胴軸とキャップに純銀(スターリングシルバー)を使った。
開発担当をしたKenneth Parkerが持っていたタバコケースの格子柄をデザインに取り入れた。高級感に包まれて発売当初より好調な売れ行きとなった。
パーカー75の特徴は、書き手の癖や、好みに応じて14金のペン先を回転させて角度が変えられることである。首軸のアルミリングに目盛りが付けられており、発売当初のものには「0」の基準印がついていた。
純銀製の高級感と重厚感がありながら、手に握ると軽く感じる。
書き心地の良さは、さすがにパーカー社だと思える。
この傑作万年筆は、中古市場で手に入れるしかない。
幸運にも所持している人は、壊さないように丁寧に使うしかない。
私も、その幸運に恵まれた一人である。
パーカー75は、私にとって従順に育ってくれた万年筆の1本である。
 
話がそれた。
2015年5月6日の笑暮屋のブログを見てみよう。
 
絶望的なまでに首軸にヒビが入り、もう使うことは不可能になったパーカー75が笑暮屋に持ち込まれた。
笑暮屋の万年筆職人、金崎徳稔はもう捨てるしかないと思われるパーカー75を、その部品をひとつ一つ、作り出していく。
首軸、ペン芯、内部のインク供給システム、リングまで真鍮を加工して、予備まで含めて作る。そしてオリジナルよりも使いやすいパーカー75へと蘇らせている
 。
金崎は、こう記している。
「余談ですが今回の製作では、オリジナルより1mm程度長く作ってあります。お気付きの方も多くいらっしゃるかと思いますが、この万年筆はしばらく使わないとペン先の乾燥が割りと早いです。キャップを閉じた際に、インナーキャップの首軸ストッパー部との間に隙間が生じます。この隙間こそがインク乾燥の一因のようです。インナーキャップを改造するなら、首軸製作のついでに本体を長くして改良したという訳です。結果パチンと閉じた時の隙間をなくすことに成功しました」
こうしてしばらく使わない状態だと、ペン先にインクが固まってしまうというパーカー75の欠点まで補ってしまっている。
 
円筒加工
円筒加工
 
2015年2月11日のブログでは、あのモンブラン・マイシュターシュトック149(以下モンブラン149)を蘇らせている。
1950年代製と思われるモンブラン149もまた、現在では入手できない銘品である。
筆記具メーカーとしてのモンブランはもはや存在しておらず、リシュモングループが所有するブランドのひとつとなっている。
1980年にダンヒルに買収される前のモンブランは長年、高品質な筆記具を造り続けてきた。そのダンヒルが1993年にリシュモングループに買収された。
こうしてリシュモングループの傘下へとモンブラン社は組み込まれた。
 
リシュモン社からモンブラン社へと就任した社長が、
「わが社の筆記具は実用品ではなく装飾品だ」
とドイツの万年筆雑誌のパーティーで述べたことは、世界中の万年筆愛好家を失望させた。
モンブラン社は腕時計、フレグランス、革製品、カフリンクス、タイバー、ブレスレットなどを販売する多角化の道を歩んでいる。
2013年度の売上高の6割は腕時計、フレグランス、革製品などが占めており、万年筆をはじめとする筆記具は非中核ビジネスの位置づけになっている。
当然ながら、筆記具の開発や製造への投資は抑えられ、1950年代のような職人の魂が注ぎ込まれた万年筆は、もはや製造されていない。
それゆえに、1950年代のモンブラン149は、二度と手に入らない傑作なのだ。
笑暮屋に持ち込まれた、絶望的なまでに壊れたモンブラン149を、金崎は蘇らせている。
 
精密を極めた作業
精密を極めた作業
 
引き継がれる加工技法
引き継がれる加工技法
 
勘違いしないで欲しい。笑暮屋は万年筆の修理をメインに請け負っているわけではない。
あくまでも、カスタムオーダーで、オリジナルの万年筆を造っている日本の匠である。
しかし、考えて欲しい。笑暮屋には世界の銘品万年筆を完璧に修理する技術があるのだ。
しかもエボナイトでオリジナルの万年筆を造っているのだ。
 
エボナイト……。
天然ゴムと硫黄を掛け合わせて、熱処理をして生まれる合成樹脂。
クラリネットやサキソフォンのマウスピースやパイプの吸い口に使われる黒い合成樹脂。
プラスチックでは、あの吹奏は生まれない。
余計な振動は、天然ゴム由来の柔軟さが吸収する
ブラスチックでは、芳醇なパイプの煙は味わえない。
煙道の構造が悪いと、タバコが辛くなり、舌も荒れ、のども荒れる。
煙道のひとつである吸い口(マウスピース)はパイプ本体との間にまったく緩みを生じないことが重要である。そして銜えたときのかすかな弾力がパイプ喫煙には欠かせない。
 
エボナイト……。
天然ゴム由来の、柔軟さを持ち、それでいて硬質であるから経年変化で痩せることがない。
万年筆の材料としては柔軟さがあるゆえに握る手に吸いつく。硬質であるから耐久性が高い。
しかし加工の難しさが理由で、多くの製品が別の合成樹脂を使うようになってしまった。
万年筆にもまた、別の合成樹脂である硬質プラスチックや、レジンキャストや、金属や、木材などが使われるようになってしまった。
その加工の難しいエボナイトから万年筆を造り出す技術が、笑暮屋にはある。
あなたにとって、生涯の伴侶となる万年筆を造る技術が、笑暮屋にはあるのだ。
なぜ、笑暮屋にはできるのか?
その話は第4話に述べることにしよう。
 
笑暮屋ブログ
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一つ一つの手作り
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